経営方針
デジタル技術革新(DX)
守りのDX “SIMA”と攻めのDX“SSA”
地球温暖化やエネルギー資源の制約、労働人口の減少といった社会課題が深刻化する中、企業には省エネルギー性と高品質を両立した製品の提供、ならびに生産効率の抜本的な向上が求められています。
当社の主力である業務用空調機(AHU)は、建物用途ごとに個別設計・製造される製品であり、従来は営業・設計・製造・品質管理など各部門の経験・暗黙知に基づく“擦り合わせ”によってモノづくりが行われてきました。これは当社の強みでもありましたが、昨今の労働力の多様化と技術継承の困難化に対し、こうした属人的なモノづくりでは限界を迎えます。これは当社に限らず多くの日本企業が直面する構造的課題でもあります。
このような課題に対処し、持続的な企業価値向上を目指すため、当社ではマテリアリティの1つに「デジタル技術革新(DX)による新しい価値の創造」を掲げています。
労働集約型の生産体制から脱却するため、既存のプロセスをデジタル化する「SIMAプロジェクト」を2020年に立ち上げ、2023年には、既存プロセスの枠組みを超えてDXを活用する「SSAプロジェクト」を立ち上げ取り組んでいます。SIMAは、人力に頼っていた既存の業務をデータ化・自働化し、人からデジタルへの置換え、効率化を目指す、社内プロセス改善を目的とした、いわば「守りのDX」です。対してSSAは、既存プロセスや人力では実現が難しかった業務に挑戦し、お客様に対する新たな価値創造や、長期ビジョンの実現を見据えたビジネスモデル変革の地盤固めを目指す「攻めのDX」です。
本戦略のもと、次世代の競争力強化に向けた取り組みを本格化させています。
DXに関する具体的な取り組み
革新的な空調機の設計
3DUI(受注設計向け3Dモデルを使用した設計ツール)による設計
3D-CAD、AIなどの先端技術を活用した空調機の設計を行い、BOMとつなげています。
先端技術とこれまでの豊富実績に基づく知識・ノウハウを融合させることで、お客様へ最高のサービスを提供しています。
生産予約システムの進化と物流再編
お客様の要求納期情報と工場稼働状況を「生産予約システム」をもってバランス調整し、24ケ月先までの需要予測と生産計画を立案。導入3年目を迎える2026年度にはSIMAにて需要予測の情報量を強化し、さらなる生産の最適化・効率化へ挑戦していきます。
あわせて、物流2024年問題を「運べなくなる世の中」になることと捉え、「物流再編」に取り組んでいます。倉庫分散と最適輸送ルートの確立に加え、必要倉庫㎡数を予測する在庫計画と上述の生産計画の両輪からなる需要予測システムを確立しています。
生産計画ミーティング
生産計画立案中の様子
デジタル工場実現に向けて
設計データを一元化し、生産設備に必要な加工情報をオンラインで取り込むシステムを構築しました。これにより、生産現場で手間をかけず正確な加工データを取り込み、実績もデータとして蓄積させます。また、設備の稼働情報をどこからでもリアルタイムで確認でき、異常時には迅速な対応が可能となりました。2025年度以降もこのシステムと連携する設備をさらに増やし、将来的にはコントロールセンターを設置する予定です。工程進捗など生産に関わるあらゆる情報を集約し、生産プロセスのさらなる改善を推進していきます。
設備稼働状況の見える化
二次元コードによるオンラインデータの読み込み
デジタル解析によるコア技術深耕
開発の過程では実機試作(リアル)と解析(バーチャル)を併用し、検証作業の時間短縮・コスト削減を図りながら、検討の幅を広げることで開発効果を高めています。蓄積してきた開発ノウハウを解析技術の進化で最大限に引き出し、当社のコア技術へと昇華させています。
ファンの音響解析
コイルフィンの熱流体解析
DX認定取得
デジタル技術を活用し、変化に対応しながら持続的な成長を目指している姿勢が評価され、経済産業省が定めるDX認定制度に基づく「DX認定事業者」としての認定を2025年11月1日付け、取得しました。
今回の認定を、グループ全体の前向きな変化のきっかけとして、これからも「人と技術が共に進化する未来」を目指して、DXの取り組みを広げてまいります。