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  • Green AHU

開発ストーリー

木製外板空調機

サステナブルな付加価値をプラスしたミライの空調機“Green AHU”に着想を得た「木製外板コンパクト型空調機」。
新たなチャレンジならではの苦労もありましたが、SINKOの技術力とチーム力で難題を乗り越え、ついに実現場へ納入した初号機が誕生しました。ここでは、アイデアの考案から初号機納入までのストーリーを、キーパーソンとして奮闘した社員へのインタビューと共にご紹介します。

  • 技術本部
    技術戦略室 部長

    有薗 伸一

    2000年入社。技術研究所、設計部勤務を経て2025年より技術戦略室の部長に就任。
    本件では、主に訴求点抽出と客先PRを担当。

  • 技術本部
    研究開発統括部 副部長

    上田 和成

    1999年入社。技術研究所、研究開発部勤務を経て
    2025年より研究開発統括部 第一部の副部長に就任。
    本件では、主に性能試験を担当。

  • 営業統括本部
    名古屋支社 フィールドセールス マネージャー

    河口 秀樹

    1997年入社。札幌営業所、東京支社アウトサイドセールス勤務を経て2025年より名古屋支社フィールドセールスのマネージャーに就任。
    本件では、主に顧客対応を担当。

  1. Chapter

    新入社員が起こした、
    新しい風

    Green AHUのアイデアはどこから生まれたのでしょうか?

    • 有薗
      有薗

      セントラル空調機のパイオニアとして、新たな挑戦を続けるSINKOグループ。
      当社グループでは、社員一人ひとりの心構えを整える道しるべとして「SINKO WAY」を定めており、そこでは「従来の延長線上の考え方を捨て、自らを変革させ創造を重ねる」「有言実行で試行錯誤を繰り返す」といったブランド像を掲げています。

      このようなブランド像を体現するため、SINKOグループでは、新入社員が新しい発想で「未来の空調機」を考える研修を行っています。“Green AHU”は、2021年の新入社員の提案「10年後の空調機」をもとに動き出しました。

  2. Chapter

    Green AHUプロジェクトが、ついに動き出す

    Green AHUプロジェクトが立ち上がり、
    コンセプトスタディモデル製作が決定した時の気持ちをお聞かせください。

    • 有薗
      有薗

      新入社員の柔軟なアイデアをカタチにしたい、そして、お客様にSINKOグループの地球環境にやさしい取り組みについての想いを伝えたい。そんな関係者の志により、サステナブルな付加価値をプラスした製品として“Green AHU”コンセプトスタディモデル製作が決定しました。2022年9月には、SINKO TECHNICAL CENTERで外板の一部を木製化した展示機を製作し、お客さまへのPRを開始。PRを始めた時点では、このモデルを広めていきたいという期待があったものの、コンセプトが市場に受け入れられるのか?という不安もありました。

  3. Chapter

    お客さまに、想いが届く

    お客様が興味を持たれたのは、どのようなキッカケでしたか?

    • 河口
      河口

      SINKOの熱い想いが届いたのか、お客様に向けたPRを開始した直後の2022年10月。SINKO TECHNICAL CENTERに来館された設計事務所のご担当者様がコンセプトスタディモデルを目にして、興味をお持ちいただきました。その後、開発部門と営業部門で連携して、環境への配慮などを含めた“Green AHU”の特長についてご説明をさせていただきました。お客様には、本コンセプトに共感いただいたことで、2022年11月にコンパクト型空調機の木製外板仕様採用に向けた検討を開始。その後、お客様ともお打合せをさせていただき、2023年3月には使用する木材の候補が決定しました。

  4. Chapter

    チャレンジその1 
    法令の壁

    外板に初めて木材を使用するにあたって、どのような課題がありましたか?

    • 上田
      上田

      使用する木材の候補が決まったことで、2023年4月から、いよいよ具体的な仕様検討がスタートしました。木製外板仕様の空調機を実際に製品化するにあたり、まずぶつかったのは、法令の壁です。通常は、ガルバリウム鋼板を使用している外板を、木材に変更することで、そもそもどのような法令が適用されるのか、またどのように法令を解釈するのか。まさに一からのスタートでした。

    • 河口
      河口

      調査の結果、消防法や東京都火災防止条例、危険物の規制に関する政令等、様々な法令等が対象となることがわかり、設計事務所様の多大なご協力をいただきながら、関係当局や外部専門機関など、関係各所への確認を約4ヶ月に亘り行いました。A4サイズの木材サンプルと通常使用しているガルバリウム鋼板を関係各所に持参して比較説明を行ったり、当社単独で国土交通省への相談も行いました。すべてが手探りで苦労が絶えなかったですね。

  5. Chapter

    チャレンジその2 
    試験や検査の数々

    法令の壁を越えた後には、どのような課題がありましたか?

    • 上田
      上田

      関係者が連携して確認を進めた結果、各種法令をクリア。2024年1月から複数の性能試験に取り掛かりました。木材使用は初めてということもあり試験項目は多岐に亘りました。リーク性能、パネル音響透過損失、反り、断熱性等、新たな素材適用から想定されるリスクを考慮して、様々な試験を通して性能確認を行いました。試験を進めるなかで、木材と標準両パネルの規格上、板厚の違いから、確実な締結と保持を両立する外板ビスを新たに考案する必要もあり、このフェーズには約4ヶ月の期間を要しました。

      リーク性能試験
      断熱性能試験
    • 河口
      河口

      それ以外にも難燃塗料の選定やその後の検査も数々ありました。まず塗料選定にあたっては、何が正しいかわからないなかで情報を集め、建築建材で使用されている塗料に辿り着きました。選定後は、工場で複数回にわたり検査を重ねました。具体的には、一定時間の経過で臭気が気になるかといった臭気に関する検査、工具や爪でどの程度の力で傷がつくのかといった傷耐性に関する検査、そして、難燃塗装の有・無を比較し水分の吸収に差があるのかといった撥水耐性に関する検査等、検査項目も多岐にわたりました。

  6. Chapter

    試行錯誤を乗り越え、
    想いがカタチに

    初の木製外板空調機の完成についてお聞かせください。

    • 河口
      河口

      社内外の関係者との様々な調整を経て、2024年6月には製作を進めるための全ての社内確認が完了し、お客様の承諾を得ることができました。その後、当社神奈川工場で生産された実機を2025年8月に無事工場出荷することができました。
      出荷にあたり、環境によっては木材に悪影響が生じる可能性があるため、その確認にはいつも以上に、細心の注意を払いました。また、繊細な材料であるため、梱包にも最大限留意しました。

    無事に出荷されたときのお気持ちはいかがでしたか?

    • 有薗
      有薗

      初めての試みで、技術部門としても試行錯誤の連続でしたが、社内関係部門の連携により、新たな製品を世の中に送り出すことができ、非常に感慨深かったです。新たな技術へのトライという機会に恵まれ、技術部門としても新しいチカラを付けることができ、今後のレベルアップにも繋がると考えています。

    • 上田
      上田

      主に担当した性能試験評価の立案・計画・実行の各ステップでも、社内外の関係者と協力・連携し、一丸となって取り組みました。特に、これまで接点がなかった木材の製造・加工などを担う異業種の方々とお話しすることができ、大変良い刺激を受けたことが印象深く記憶に残っています。
      無事に出荷できた今、安堵感と同時に、いくつもの課題を乗り越えた達成感を感じています。

    • 河口
      河口

      営業部門としては、お客様に採用していただくためのわかりやすく魅力が伝わる資料作成、設備業者様や設計事務所様、施主様との折衝・説明等といった点で大変苦労しましたが、今後も引き続き当社を信頼して取引していただくために、妥協なくきめ細やかな対応を心掛けた案件でした。営業窓口としてプレッシャーも大きかったですが、社内だけではなく社外関係者のご協力により何とか形にすることができ、今は安堵しています。

  • 環境に配慮した製品を、これからも。

    “Green AHU”コンセプトスタディモデルはSINKO TECHNICAL CENTER、SINKO AIR DESIGN STUDIOの両ショールームで展示されており、来館されるお客さまへのPRを続けています。サステナブルな付加価値をプラスした空調機を通じて、カーボンニュートラル社会の実現に貢献したい。今後も、その想いが日本中に届くことを願っています。

※取材内容、所属・役職および写真は取材当時(2025年8月)のものです。